犬の笑顔はアハー

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旅の思い出 2013夏 4

 3日目の続き。

 のんびりと車窓からの風景を楽しみ、15時半過ぎに長野到着。長野駅のホームの立ち食い蕎麦の香りを振り切り、改札を出た。

さっさとホテルに行きチェック・イン。新潟のホテルでは、まだ不慣れな感じの若いお兄ちゃんがフロントにいたが、このホテルではベテランのおじさまが物腰やわらかに対応。

部屋には氷水の入ったポットと、それとは別の湯沸し用のポットには水がスタンバイしていた。なかなか気の利いたサービスではないか。水をがばがば飲む私にはうれしい。

一息いれてから街に出た。

 

 宿泊するホテルの地下に飲み屋がある、ということで開店前だけどちょっと偵察。メニューの短冊が外に何枚か張ってあって『いのしし串焼き』とか『そばの実コロッケ』とか心惹かれる。地酒もあるみたいだし。でも、まあまだ時間は早いし街歩きに行きましょう。

 歩きだしてまもなく、栗菓子のお店が目にとまる。店の入り口側が売店で奥には広い喫茶コーナーがある。外には美味しそうなモンブランの写真。

今日は色々あって小布施にいけなかったし、という言い訳で自分を甘やかす事にして中に入った。モンブランにするか栗のロールケーキにするか迷ったけれど、やっぱりモンブラン。それとダージリンを注文。

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       美味しい。

 

 ゆっくりおやつを楽しんだ後、今夜の飲み屋を探しに行くかと再び外へ。色々店が立ち並ぶ通りを歩いているとちょうど5時。

「開店でーす!」

と呼び込みをしている飲み屋があった。あ、ここネットで見た店だ。日本酒もいっぱいあるみたいだし、ここでもいいかな。いまひとつだったら一杯だけのんで他に行けばいいや、と店に足を踏み入れた。

 その瞬間、あれ、この店入った事あるぞ。なんだこの既視感は。

すぐに思い出した。昨年12月、夫と行った盛岡で入った店と同じ系列なんだ。民芸調の内装や部屋の造りがそっくり。そういえば新潟でも見かけたっけ。チェーン店とは知らなかった。

一人で呑むのにふさわしい店ではないような・・・と思ったけど、太鼓をどーんと鳴らされてカウンターへ『ご案内』。

一杯呑んでさっと出るような雰囲気の店ではないので、まあいっか、とくつろぐ事にした。それにしてもコの字型のカウンターもカウンターの内側の調度や小物類も、オープンスタイル?な個室も盛岡の店とよく似ている。なんと私が座った席も盛岡での席の位置と(たぶん)同じだった

 「お姫様どうぞ。」とおしぼりをわたされた。お姫様と言われても40代でやさぐれている私は戸惑うばかりである。盛岡ではお姫様扱いされたかしら?憶えていない。おしぼりは冷たいものと温かいものを選べたので温かい方を選んだ。冷めてたけど。

 

 旅行前、

「長野では酒は何を呑むべきか?」

という私の問いに夫は

「御湖鶴を呑め。」

と答えたので、まずは御湖鶴を注文。本醸造だったと思う。純米があったらうれしいんだけどな。

お通しは、蓋付きの器に入った鶏胸肉と野菜の酒蒸し。目の前で火をつけてくれる、旅館の食事の一人鍋みたい。

何食べようかとメニューを見ていたら

「行商でーす。」

と大皿に数種類の漬物をのせてやって来た。せっかくなのでカブの塩漬けを頼んだ。

その他の注文   ・戸隠のえごまのごぼう炒め

         ・塩まるいか

         ・すんき

全部、長野の郷土料理である。塩まるいかはずっと以前、新宿の吉本で食べた事があった。(名称はちょっとちがったような気がする)

ゆでて塩漬けにしたイカは海のない長野で食べられる貴重な海の幸だったのだろう。吉本のはシンプルな塩味だった。イカの塩分だけだったのかな?おいしかった。

さてこの店の塩まるいか。マヨネーズで和えてあった。うーむ。

イカの塩分がけっこうきつめで、それをさらにマヨネーズ。もちろん、おいしくないわけではないが、ちょっとがっかり。

すんき。実はこれを一番食べてみたかった。以前テレビで見て興味をもった漬物。木曽地方の郷土食で、塩を使わず乳酸発酵で漬かる、全国でも珍しい漬物らしい。

すごく美味しかった。初めてのつもりだったけれど、どこかで食べた事があるかもしれない。なんだか知っている味だった。私はすんきが好きだ。この晩食べたものの中で一番だったかも。

 

 午後に鉄道で函館入りしていた夫とは、呑みながらメールのやりとりをしていたけれど、彼がその日に入ったお店は『ややハズレ』だったようだ。でも

「明日いく予定の店には、すごい期待をしているんだ。」

という事だった。それは楽しみだね。

 

  私が最初の客だったけれど、いつのまにかカウンターにはお客さんが増えていた。おじさん二人組以外はみなさんカップルである。ほとんどの方が日本酒を呑んでいる。

 隣のアラフォー・カップルの男性が店員さんに

「日本酒っていうと新潟のイメージが強いですけど、長野もたくさんあるんですねえ。」

それに対して、新潟は蔵の数だか酒の数だか(このへんの記憶は不確か。酔ってたから。)が日本一だけれど、長野はその次に多いのですと答えていた店員さん。彼は秋田出身らしい。

 

 次のお酒は『幻夢(特別純米 無濾過 中どり)』を頼んだ。

「香りの良いお酒ですよ。」

と言われて楽しみに待っていたら、ヒノキの酒器に入れられてきた。

実は私、枡酒があまり好きではない。ヒノキの香りが邪魔をして、お酒の香りがわからなくなるから。(ヒノキの香り自体は好きだ。)

この酒器は枡ではなく片口のようなもの。お猪口に注いで呑んだのだが、やっぱり陶器の酒器がよかったな。

でも一緒に出てきたモンゴルの岩塩(塊を目の前でごりごりしてくれる)はお酒に合って美味しかった。

 

 ここはお酒が正一合で出されるので、酒好きだけれど量は呑めない私にはちょっときつい。でももうちょっと呑みたいなあ。半合で出してもらえないかなあ、と頼んでみたけど

「申し訳ありません。」

と断られてしまった。じゃあごはんでも食べよう、と白いごはんを注文。ほかほかの白いごはんとカブ漬けの合う事!すんきもばっちり。最後にお味噌汁もいただいて、ごちそうさまでした。

 

 いくつか残念な感想を持ったけれど、こういうお店は楽しい。時代劇のセットみたいだし、酒呑みのテーマパークみたいでおもしろい。

お店の名前は 信州長屋酒場 であった。秋田に本店(1号店?)があるらしい。盛岡で入ったのは、南部藩長屋酒場。各地にそれぞれの地名のついた長屋酒場があるみたい。

 

 酔い覚ましに善光寺まで行ってみるか、と歩き出した。夜道とはいえ飲食店や街灯も多く、明るい。道沿いにあるマンションの一階エントランスの屋根が瓦だった。景観に合わせているのかな。

 

夜の参道

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 善光寺という文字の入っている二つ目の門まで行って、もどることにした。

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 帰り道、横にのびるアーケード商店街を歩いてみた。長野電鉄の権堂駅に着いたところで踵を返した。駅の手前にイトーヨーカドーがあって、その前の広場には程よい高さの台があり、2,3組の男性達が盛り上がるわけでもなく静かに腕相撲をしていた。夜の人通りの少ない時間に奇妙な光景だった。あれはなんだったんだろう。

商店街のパン屋さんでソフトクリームを買って、食べながら歩いていたら向こうから来たメガネの中年男性に

「どこかに飲みに行きませんか?」

と声をかけられてびっくり。酔っぱらってソフトクリーム食べながら歩いている44歳の私はそんなに魅力があったのか?丁重にお断りして、コンビニで朝食用の納豆巻きとネギの味噌汁、非常食のじゃがビー、あとで飲むグレープフルーツジュースを購入し、ホテルにもどった。

 それにしても、色々あった一日だった。ふう。

                 つづく。あと一日分。