犬の笑顔はアハー

呑んだり食べたり見たり聴いたり読んだり思ったり

今更シリーズ 旅の思い出2013秋

 あれよあれよという間にもう2014年の3月ではないか。

先日、旅行に行ってきたので、その事を書きたいと思ったのだが、昨年秋の旅と冬の旅について書いてないので、まずそちらを書く事にする。

 

 2013年9月なかば、福島県へ行った。旅の目的は二つ。福島県立美術館で特別展『若冲がきてくれました プライスコレクション江戸絵画の美と生命』を見る事と、なぜかいつも夫婦バラバラのそれぞれ一人旅で行っている会津若松に二人で行く事、であった。

 

  1日目。

 早起きして東京発7時44分の新幹線に乗り、家から持参したパン(炒めたウインナとキャベツをはさんだドッグパン、きゅうりの糠漬けをはさんだサンドイッチ)で朝食をとった。糠漬けサンドは、よく漬かったきゅうりがあるのに旅行に出なければいけない、じゃあパンにはさんで持って行こう、という思いつきで作った。日本のピクルスだもの。予想通り美味しかった。バターがきめてだ。

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グーグー寝た後、9時45分福島着。荷物をロッカーに預け、飯坂線に乗り美術館図書館前駅へ。歩いてすぐの所に美術館はあった。電車から降りた他の人達の目的も私達と同じ。さっさと歩いて、すでにできていた行列に並んだ。

 人気の展示で連日かなり混んでいる、1時間待ち、という情報もあったので覚悟していたけれど、列はさくさくと進み、15分程で建物内に入れた。

入ってすぐの壁には敷地内の除染状態についての張り紙があった。ああ、ここはFUKUSHIMAなのだな。

 チケットを購入してさっそく絵を鑑賞。じっくり見るには人が多すぎるので解説はとばして絵に集中。ユーモラスな絵がたくさんあって楽しい。日本の漫画文化の源流はここにあったか。若冲の絵も堪能した。

展示場を出たところにあった、対の屏風。これはレプリカなので写真OK。

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牛の足元にいる犬が可愛いじゃないか!

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 長沢芦雪(ながさわろせつ) 白象黒牛図屏風

 

 福島に戻り、昼食をとろうと駅周辺をさがしまわるが、あまり店がない。ない、わけではないのだが、お米を食べたい私が入りたいお店が見当たらなかった。じゃあ、まあいっか、とチェーンの居酒屋ランチで妥協する。夫は豚の生姜焼き定食、私は豚の照り焼き丼。夫の定食にはとろろがついてきたのだが、ちょっと甘めの味がついていて、それが彼には不満のようであった。(一口もらったけど、確かにおいしく感じなかった。好みだろうが。)

 新幹線で郡山に行き、磐越西線に乗った。私が一人で会津に行くのはいつも新潟に行った後なので逆方向から会津に行く。この行き方は新鮮。(帰りはいつも郡山ルート。)

16時9分に会津若松着。宿に向かうべく、あかべえ(周遊バス)に乗って東山温泉へ行った。

 今回の会津二人旅では、初日は夫の定宿、二日目は私の定宿に泊まろう、という事になっていた。定宿といっても2、3回泊まっただけなのだが。

私はいつもバスには乗らず、ひたすら歩き回っているので、初めてのあかべえ。そして東山温泉も初めて。夫によると、色んな意味でスゴい宿らしい。

 

 さて。

まずロビーに足を踏み入れて感じたのは「カビ臭い!」

フロントには誰もいない。呼んでも出てこないので夫が奥まで行って声をかけたらやっと出てきた。噂どおりの宿である。

廊下もロビーほどではないけれどカビ臭有り。そして、チカチカしかかっている薄暗い蛍光灯が、否が応でも不気味さをアップさせる。

 部屋はさすがにカビ臭はなく、古いけれど普通にこじんまりした和室だった。

冷蔵庫の中にはアルコールを含む飲み物がいくつかと、柿の種が入っていた。

こういう古い宿の冷蔵庫って中の飲み物も古かったりしてね、なんて冗談で言ってたら、こんなトマトジュースが・・・

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製造日じゃないよね。

地酒の花春は製造日が。まあ、日本酒は賞味期限ってないから大丈夫。保存状態にもよるとは思うが。熟成しているか?

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お、柿ピーは賞味期限内だ。

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ちなみにこの日は2013年9月13日だった。

まあ、私自身は賞味期限過ぎたものだって平気で食べちゃうけど。消費期限切れの豆腐とかも火を通して食べてるし。家庭内の話だが。

 

 ひと風呂あびてから1日目のメイン、居酒屋籠太へタクシーで向かった。

私は籠太が大好きで、特に籠太のこづゆがお気に入り。二人で行くなら絶対こづゆは一人一つ頼もうね。と前々から言っていた。分け合って食べるんじゃ物足りない。これが、こづゆ。会津の郷土料理である。

 

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予約しておいてよかった。

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奈良萬の燗を頼んだら、太田和彦さんが籠太にプレゼントした百名盃(ひゃくめいはい)というお猪口を使わせてもらえた。これがとても持ちやすく、呑みやすく、しかも美味しく呑める絶妙なものであった。

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 福島の美味しいお酒色々と美味しい肴色々で、満足してお店を出た。

路地をちょっと散策して猫と戯れた後、タクシーを拾い、宿にもどった。素泊まりなので、途中コンビニに寄ってもらって、翌日の朝食のおにぎりと味噌汁を購入。

 

 夕方まだ明るいうちのお風呂場も薄気味悪かったが、夜のお風呂のコワい事!

でも、泉質重視の夫が選んだ宿だけに、お湯はすごく良い。自家源泉のかけ流しだそうだ。でもコワいから長湯はせずにさっさと出てしまった。

 

  2日目。

 8時前に起きて、お風呂に入って朝食をとって、10時前にチェックアウト。

近くの古くて立派な高級旅館の写真を撮ったり、ぶらぶら散策してから、夫は2度目、私は初めての武家屋敷へ。

思っていたよりも広くて、見る所がたくさんあり、見終える頃にはすっかり疲れていた。で、施設をでた所にあった飲食コーナーで抹茶とバニラのミックスソフトクリームを食べた。疲れた時の甘いものは本当に効く。回復。

 昼食はお蕎麦屋さんの桐屋夢見亭。

私は以前、ここと同じ系列の桐屋権現亭で水そばと揚げまんじゅう(まんじゅうの天ぷら)を食べた事がある。水そばとは、おそばが何の味もついていないただの水に浸っている、ただそれだけのものだけれど。

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漬物をかじりながらすする水そばは、なかなかいける。美味しいごはんを漬物で食べる感じに近い、かな。おそばの味がしっかりしていて、水も美味しくないとダメなメニューだと思う。

キリンラガー中瓶2本と青ばた豆腐、会津の天ぷら盛り合わせ、そして水そばをいただいた。天ぷらはまんじゅうはもちろん、朝鮮人参まで揚げてあった。朝鮮人参って初めて食べたけど、苦いんだな。

 

 バスで会津若松駅に行き、私がよく利用しているビジネスホテルへ。チェックインにはまだ時間が早いのでフロントで荷物を預かってもらって、街の散策に繰り出した。いつも一人で歩き回っている場所を夫と歩くのはなんだか新鮮である。

 今まで見た事がない立て札が所々ある事に気づいた。近づいてみると、『八重物語り』。新島八重の生涯のあれこれが、味わい深いイラストとともに書いててある。こんな感じのがあちこちに。

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1時間ちょっとぶらぶらしてからホテルに戻ってチェックイン。

利便性重視で宿を選ぶ私なので、このホテルは駅に近く、スーパーも近くにある。会津若松は街中にコンビニを見かけないので、駅のNewDays(コンビニ。24時間営業じゃないけど。)がそばにあるのでよく利用する。

 

 一休みしてから、2日目のメインである盃爛処へ向かった。ここは夫が前年入って、大層気に入ったお店である。私は初めて。予約した時間を数分遅れて入店した。

 馬ハラミがものすごく美味しい、と聞いていたので食べてみた。馬ハラミ自体初めて食べたのだが・・・うわー!美味しい!!バターのような甘みがあって絶品。

食べかけの写真だけど。

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今でも思い出すと食べたくなる。

油揚げも美味しかった。厚ぼったいタイプの油揚げ、大好き。

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手前はつくね。

その他にも色々食べた。もちろんお酒も。会津娘の純米吟醸とか、国権の純米吟醸とか、風が吹くの山廃純米とか、他にも福島のお酒を色々。変わったものではSnow Dropという、ヨーグルトのリキュールをサービスでのませてもらった。飲むヨーグルトみたいだけど、アルコール度数はビールよりちょっと強め。口当たりがいいからお酒の弱い人でもクイクイいけてしまいそうだが後で大変な事になるかも。原材料はすべて会津産だという。

 こんなのも呑んだ。洒落たラベルだなあ。

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で、さんざん呑んだり食べたりしたわりには、お会計で請求された額が驚きの価格で、「安い!」と夫婦で声をそろえて言ってしまった。純米吟醸クラスのお酒を中心に呑んでいたというのに。良いお店だ。

店主のカズくん(お店の人にも常連さんにもそう呼ばれていた)には長生きしてもらいたい。ものすごく立派な腹の持ち主なのでちょっと心配。余計なお世話だろうが。長く続いて欲しいお店だ。

 

 ホテルにもどって夫は先にシャワーを浴び、寝っころがって漫画を読もうとしていたが、1ページも読まないうちにぐーぐー。

私はチェックインの時にもらったアメニティーグッズ(女性のみ)に入っていた入浴剤を入れてのんびりお風呂に入った。(このホテルの宿泊客は、近くの入浴施設に無料で入れるのだが今回は利用しなかった。)

私がお風呂から上がってしばらくしたら、夫が復活。「第2ラウンドだ!」と言って、ホテルにもどる前に買っておいたビールを飲み始めたのだった。どこまでのむんだこの男は!付き合う気のない私はさっさと床につき、本を読み始めたけれど寝落ち。ぐー。

 

  3日目。

 半年も前の事を書くのもつらくなってきたので、最終日は思い切りはしょってしまえ。

 

 台風が近づいていたこの日は雨が降ったりやんだり。午前中は別行動をとっていた夫と待ち合わせ、かなりの雨の中を向かった先は満田屋。味噌と田楽のお店である。

以前ここで食べた田楽が美味しかったので、夫にも食べてもらおうとやってきた。人気店だし、日曜日の昼時ということもあって、混んでいた。店内のベンチに座りしばらく待っているうちに順番がきたのでカウンター席に座った。カウンターだと目の前で焼いているのが見えるのだ。

田楽メニューは単品もあるけれど、色々楽しめる田楽コース1250円を注文した。前回来た時もこれ。こんにゃく2本、豆腐生揚げ、おもち、しんごろう餅、里芋、身欠きにしん、のコースである。具材によって味噌が変えてあって、とても美味しい。でもビールがスーパードライなのがちょっと不満。

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上の写真は、 手前右から順番に、しんごろう餅、里芋、身欠きにしん、おもち。

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こんにゃく

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生揚げ

 夫も気に入ったようで、ビールの後で日本酒(会津中将と、あけぼの酒造の純米)をぐいのみで3杯も呑んでいた。ちなみに周りを見ても、昼間からアルコールを飲んでいる人はほとんどいなかった。皆さん車なのかな。それとも単に私達がダメ人間なのか?

 

 雨もあがり、近くにある酒蔵、末廣へ向かった。私は前回2011年の夏にも行った。震災後、会津の観光客もがくっと減ったと聞き、夫に「金使ってこい!」とお小遣いをわたされて末廣の売店でも意識して多めにお土産を買ったのだった。

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前回の酒蔵見学は私一人に蔵の人のマンツーマンだったけれど、今回はそれなりの人数。夫はこの蔵は初めて。

見学後、試飲させてもらった。試飲の量がほんとにちょびっとなのが夫には物足りなかったらしい。確かに、今まで行った事のある他の蔵や酒屋さんの試飲はもうちょっと入れてくれることが多いけどさ。さんざん呑んだからもういいでしょ。

 

 のんびり駅にもどるか、と通ったことのない道を歩いていた。そろそろ駅に着きそう、というあたりに『大熊町 仮設住宅』があった。せつない。今思い出しても。

 

 駅のお土産屋さんでままどおるとエキソンパイを買い、実家には、かすてあん。

まだ時間があったので、向かいの蕎麦屋でおやつ。夫は揚げまんじゅうとコーヒーのセット、私はアイスクリーム。アイスクリームには、あまりうれしくないカラースプレーがパラパラかかっていて、ちょっとがっかり。揚げまんじゅうにしておけばよかった。

 

 台風の影響で、あちこちで電車が止まっているという不安なニュースを聞いていたので郡山までもどれるか心配だったけれど、無事に行けそうで安心した。

16時21分の鈍行で郡山へ。出発前に車内から外を見ていると、会津に到着したばかりの人達がホームに降りてきた。(翌日には会津にも台風が。あの人たちはどう過ごしたのだろう。)

郡山まで車内で熟睡していたので、新幹線に乗り換えてからは眠らずに19時44分東京着。

東京駅で降りた時はそうでもなかったけれど、乗り換えで秋葉原で降りた時、むあっと暑さを感じた。電気をたくさん使っている街だからかな?

 

 地元の駅に着き、なじみの飲み屋、い(仮)へ。マスターが丁寧に作っていつも美味しいお通しをビールとともにいただきながら、「あー、帰ってきた。」としみじみ。

穴子の白焼きが美味しい。夫は会津では食べなかった魚の刺身を注文。(馬刺し、馬レバーを食べていた。)

 籠太、盃欄処、い(仮)、みんないいお店だ。良い旅だった。

 

 

 このブログのタイトルにある写真は2011年夏の会津鶴ヶ城で撮ったもの。

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 もうすぐ震災から3年か・・・

旅の思い出 2013夏 5

 4日目。

 NHKでやっていた干潟の生き物番組を見ながら、納豆巻きとネギの味噌汁の朝食をとる。生き物たちがあまりに可愛らしいので函館にいる夫にメールしたら、おにぎりとネギの味噌汁の朝食をとりながら同じ番組を見ている、と返事が来た。

 

 長野県信濃美術館別館の東山魁夷館に行く、というのが今回長野に来た一番の動機である。美術館は善光寺の隣。前夜歩いた道を晴れた午前中に行くのはちょっと不思議な気分である。見える景色が違う。観光客も多い。

 腹ごしらえに12時少し前、参道にある昔ながらのお蕎麦屋さんに入った。蕎麦屋に入るとついつい天丼を食べたくなってしまうが、せっかくの蕎麦どころ信州。お蕎麦を食べなければ。シンプルに『ざる』にするか、贅沢に『ざる天ぷら』にするか、それとも『ざるとろろ』にするか。悩んだすえに『ざるとろろ』に決定。

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 美味しい。ビールは自制した。ごちそうさまでした。

 

 善光寺に近くなると、道行く人も増えてきた。あちこちの売店でソフトクリームを売っている。そういえば前に夫が長野一人旅した時、参道で栗ソフト食べて美味しかったと言ってたな、と思い出してキョロキョロ探したけれど見つからなかった。

 有名な、『牛にひかれて善光寺参り』の牛がかわいい。

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とても天気が良い日だった。

 

 美術館に着き、チケットを購入。本館では黒田清輝展の最終日で、本館別館両方見られる共通チケットもあると言われた。せっかくだから見たい気持ちはあったが、美術展のハシゴは精神的にも体力的にもつかれるだろうと、予定通り東山魁夷だけ見ることに。

 

 市川市東山魁夷記念館というのが我が家の近くにあるので、年に何回か散歩がてら出かけている。画伯は戦後、99年に亡くなるまでずっと市川にお住まいだったそうで

「戦後の絵はすべて市川の水で描きました。」

という言葉も映像で残っている。しかし原画は市川にはほんのちょっとあるだけで、その多くは若い頃からゆかりのある長野県に寄贈し、この東山魁夷館ができたそうである。

それを聞いたときから来てみたいと思っていたのだ。

 

 『Imagine』というテーマの展覧会を時間をかけて鑑賞。

《窓》、《静かな町》、《雪の城》、 詩画集《コンコルド広場の椅子》、等が特に気に入った作品。順路を後戻りして何度も見た。

 

 じっくり見てへとへと。黒田清輝をあきらめてよかった。

館内のカフェに入って そば白玉ぜんざい黒蜜がけ を注文。

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そば白玉は歯ごたえがあって美味しかった。

 おやつで元気をとりもどし、外に出た。まだ時間は早いけど、とりあえずのんびり駅に向かう事にした。参道を歩いていたら見つけてしまった、栗ソフトの店。でもおやつ食べたばっかりだし、その中には抹茶アイスが入っていたし、今回は見送り。

 

 駅周辺でお土産を見て回った。前日お茶した栗菓子屋さんで実家用に栗のダコワースを発送してもらう手続きをした。ついでに同じものをバラで二つ、自分たち用に購入。夫両親には駅前の東急でおやきを。夫姉夫婦には単身赴任している義兄と一緒に食べられるように日持ちするミニサイズの栗羊羹6個入りを駅の売店で。これも自分たち用にバラで二つ購入。

 帰りの新幹線は19時7分。まだまだ時間がある。夕食をどうするか。前夜に心ひかれた、いのしし串焼きとそばの実コロッケを思い出したが、せっかく行くなら帰りを気にしないでのんびりしたいし、夕べはちょっと呑みすぎたし、と思いを振り切る。お弁当でも買うかな。そういえば駅でおやきを売っていたっけ。それとビールでいいや、と決定。

 本屋で時間をつぶしてから、おやきを購入。野沢菜・ナス・ニラの三種類。そして待合室のベンチに腰かけてしばらく過ごした。

ベンチの真ん前には立ち食い蕎麦屋さんがあり、良い香り。あったかいおそばを食べたいけれど、おやき買っちゃったし、がまん。なんだか我慢と諦めと妥協の多い旅だったな。主に飲食関係で。

 多くの人がおそばをすすっているる待合室のその蕎麦屋さん、8月いっぱいで閉店するという張り紙があった。あら残念、次来た時にはここで食べようと思ったのに。でもよく見たら、この待合室自体が9月2日で閉鎖という張り紙もあった。そういえば駅内で工事しているところもあったし、リニューアルするのかもしれない。

室内のモニターには在来線の発着情報は出ているのに、なんで新幹線の情報はないのかしら、と思っていたらここは在来線の待合室で新幹線の待合室は新幹線改札のそばにあった。それに気づいたのは改札に向かった時だったが。

 改札を通り、電光掲示板で乗り場を確認しようと見上げたら、次の東京行き発車は19時30分となっている。あれ、私の乗る19時7分は?まだ19時前だよ。どうなってんだと思っていたら放送が入り、電光掲示板の内容は間違いですごめんなさい、だったので売店でキリン一番搾り500ミリ缶を購入。もう新幹線はホームに来ていたのであわてて乗り込んだ。

 とりあえずカンパーイ!とビールを飲み、おやきを食べた。

夫両親に買ったおやきは焼き色のついた、その名の通り焼いたものだったが、自分用に駅で買った方は、蒸したタイプ。野沢菜のはおいしい。ニラはちょっと甘めだけどビールに合う。ナスは・・・私には甘すぎだった。(そういえば長野では料理に砂糖をたっぷり使う人が多いと聞いたことがある。家庭によるのだろうが。)

おやきを全部食べてもビールがまだ残っていたので前夜買ったじゃがビーをつまみに飲んだ。飲みながら函館にいる 夫にメールしたら、「今夜の店サイコー!」と幸せそうに呑んでいた。よかったね。

 それにしても、ここまで読み返してみると、あれが食べたいこれが食べたい美味しい美味しくない、と飲み食いについてばかり書いている。いじきたないなあ私。ま、いいか。

 

 さよなら長野。また来るよ長野。次回は必ず小布施にいくぞ。

 

                    おしまい

旅の思い出 2013夏 4

 3日目の続き。

 のんびりと車窓からの風景を楽しみ、15時半過ぎに長野到着。長野駅のホームの立ち食い蕎麦の香りを振り切り、改札を出た。

さっさとホテルに行きチェック・イン。新潟のホテルでは、まだ不慣れな感じの若いお兄ちゃんがフロントにいたが、このホテルではベテランのおじさまが物腰やわらかに対応。

部屋には氷水の入ったポットと、それとは別の湯沸し用のポットには水がスタンバイしていた。なかなか気の利いたサービスではないか。水をがばがば飲む私にはうれしい。

一息いれてから街に出た。

 

 宿泊するホテルの地下に飲み屋がある、ということで開店前だけどちょっと偵察。メニューの短冊が外に何枚か張ってあって『いのしし串焼き』とか『そばの実コロッケ』とか心惹かれる。地酒もあるみたいだし。でも、まあまだ時間は早いし街歩きに行きましょう。

 歩きだしてまもなく、栗菓子のお店が目にとまる。店の入り口側が売店で奥には広い喫茶コーナーがある。外には美味しそうなモンブランの写真。

今日は色々あって小布施にいけなかったし、という言い訳で自分を甘やかす事にして中に入った。モンブランにするか栗のロールケーキにするか迷ったけれど、やっぱりモンブラン。それとダージリンを注文。

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       美味しい。

 

 ゆっくりおやつを楽しんだ後、今夜の飲み屋を探しに行くかと再び外へ。色々店が立ち並ぶ通りを歩いているとちょうど5時。

「開店でーす!」

と呼び込みをしている飲み屋があった。あ、ここネットで見た店だ。日本酒もいっぱいあるみたいだし、ここでもいいかな。いまひとつだったら一杯だけのんで他に行けばいいや、と店に足を踏み入れた。

 その瞬間、あれ、この店入った事あるぞ。なんだこの既視感は。

すぐに思い出した。昨年12月、夫と行った盛岡で入った店と同じ系列なんだ。民芸調の内装や部屋の造りがそっくり。そういえば新潟でも見かけたっけ。チェーン店とは知らなかった。

一人で呑むのにふさわしい店ではないような・・・と思ったけど、太鼓をどーんと鳴らされてカウンターへ『ご案内』。

一杯呑んでさっと出るような雰囲気の店ではないので、まあいっか、とくつろぐ事にした。それにしてもコの字型のカウンターもカウンターの内側の調度や小物類も、オープンスタイル?な個室も盛岡の店とよく似ている。なんと私が座った席も盛岡での席の位置と(たぶん)同じだった

 「お姫様どうぞ。」とおしぼりをわたされた。お姫様と言われても40代でやさぐれている私は戸惑うばかりである。盛岡ではお姫様扱いされたかしら?憶えていない。おしぼりは冷たいものと温かいものを選べたので温かい方を選んだ。冷めてたけど。

 

 旅行前、

「長野では酒は何を呑むべきか?」

という私の問いに夫は

「御湖鶴を呑め。」

と答えたので、まずは御湖鶴を注文。本醸造だったと思う。純米があったらうれしいんだけどな。

お通しは、蓋付きの器に入った鶏胸肉と野菜の酒蒸し。目の前で火をつけてくれる、旅館の食事の一人鍋みたい。

何食べようかとメニューを見ていたら

「行商でーす。」

と大皿に数種類の漬物をのせてやって来た。せっかくなのでカブの塩漬けを頼んだ。

その他の注文   ・戸隠のえごまのごぼう炒め

         ・塩まるいか

         ・すんき

全部、長野の郷土料理である。塩まるいかはずっと以前、新宿の吉本で食べた事があった。(名称はちょっとちがったような気がする)

ゆでて塩漬けにしたイカは海のない長野で食べられる貴重な海の幸だったのだろう。吉本のはシンプルな塩味だった。イカの塩分だけだったのかな?おいしかった。

さてこの店の塩まるいか。マヨネーズで和えてあった。うーむ。

イカの塩分がけっこうきつめで、それをさらにマヨネーズ。もちろん、おいしくないわけではないが、ちょっとがっかり。

すんき。実はこれを一番食べてみたかった。以前テレビで見て興味をもった漬物。木曽地方の郷土食で、塩を使わず乳酸発酵で漬かる、全国でも珍しい漬物らしい。

すごく美味しかった。初めてのつもりだったけれど、どこかで食べた事があるかもしれない。なんだか知っている味だった。私はすんきが好きだ。この晩食べたものの中で一番だったかも。

 

 午後に鉄道で函館入りしていた夫とは、呑みながらメールのやりとりをしていたけれど、彼がその日に入ったお店は『ややハズレ』だったようだ。でも

「明日いく予定の店には、すごい期待をしているんだ。」

という事だった。それは楽しみだね。

 

  私が最初の客だったけれど、いつのまにかカウンターにはお客さんが増えていた。おじさん二人組以外はみなさんカップルである。ほとんどの方が日本酒を呑んでいる。

 隣のアラフォー・カップルの男性が店員さんに

「日本酒っていうと新潟のイメージが強いですけど、長野もたくさんあるんですねえ。」

それに対して、新潟は蔵の数だか酒の数だか(このへんの記憶は不確か。酔ってたから。)が日本一だけれど、長野はその次に多いのですと答えていた店員さん。彼は秋田出身らしい。

 

 次のお酒は『幻夢(特別純米 無濾過 中どり)』を頼んだ。

「香りの良いお酒ですよ。」

と言われて楽しみに待っていたら、ヒノキの酒器に入れられてきた。

実は私、枡酒があまり好きではない。ヒノキの香りが邪魔をして、お酒の香りがわからなくなるから。(ヒノキの香り自体は好きだ。)

この酒器は枡ではなく片口のようなもの。お猪口に注いで呑んだのだが、やっぱり陶器の酒器がよかったな。

でも一緒に出てきたモンゴルの岩塩(塊を目の前でごりごりしてくれる)はお酒に合って美味しかった。

 

 ここはお酒が正一合で出されるので、酒好きだけれど量は呑めない私にはちょっときつい。でももうちょっと呑みたいなあ。半合で出してもらえないかなあ、と頼んでみたけど

「申し訳ありません。」

と断られてしまった。じゃあごはんでも食べよう、と白いごはんを注文。ほかほかの白いごはんとカブ漬けの合う事!すんきもばっちり。最後にお味噌汁もいただいて、ごちそうさまでした。

 

 いくつか残念な感想を持ったけれど、こういうお店は楽しい。時代劇のセットみたいだし、酒呑みのテーマパークみたいでおもしろい。

お店の名前は 信州長屋酒場 であった。秋田に本店(1号店?)があるらしい。盛岡で入ったのは、南部藩長屋酒場。各地にそれぞれの地名のついた長屋酒場があるみたい。

 

 酔い覚ましに善光寺まで行ってみるか、と歩き出した。夜道とはいえ飲食店や街灯も多く、明るい。道沿いにあるマンションの一階エントランスの屋根が瓦だった。景観に合わせているのかな。

 

夜の参道

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 善光寺という文字の入っている二つ目の門まで行って、もどることにした。

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 帰り道、横にのびるアーケード商店街を歩いてみた。長野電鉄の権堂駅に着いたところで踵を返した。駅の手前にイトーヨーカドーがあって、その前の広場には程よい高さの台があり、2,3組の男性達が盛り上がるわけでもなく静かに腕相撲をしていた。夜の人通りの少ない時間に奇妙な光景だった。あれはなんだったんだろう。

商店街のパン屋さんでソフトクリームを買って、食べながら歩いていたら向こうから来たメガネの中年男性に

「どこかに飲みに行きませんか?」

と声をかけられてびっくり。酔っぱらってソフトクリーム食べながら歩いている44歳の私はそんなに魅力があったのか?丁重にお断りして、コンビニで朝食用の納豆巻きとネギの味噌汁、非常食のじゃがビー、あとで飲むグレープフルーツジュースを購入し、ホテルにもどった。

 それにしても、色々あった一日だった。ふう。

                 つづく。あと一日分。

 

旅の思い出 2013夏 3

 3日目。

 この日の予定。新潟発7時55分の特急で直江津に行き(9時36分着)、直江津発10時13分の信越本線で長野に着くのが11時53分。小布施に行く前に長野で昼食をとるか、小布施に着いてから食べるのか、そのへんは臨機応変で。小布施では信州小布施北斎館へ行って、葛飾北斎の絵を見るつもり、栗のお菓子も食べたいな、だった。

 

 朝食は車内で簡単にすまそうと、乗車前に駅の売店でサケのおにぎり一つと十六茶を購入。旅に出るとついつい食べ過ぎてしまう可能性があるので、この旅の朝ごはんはコンビニのおにぎり1個と味噌汁程度にしようと決めていた。本当はおにぎり2個食べたいけどがまん。

 

 2分ほど遅れて発車した特急北越2号は順調に走っていた。時々雨が降ったりやんだりするも、快適な鉄道旅であった。途中までは。

『大雨の影響でスピード落として運行します』という車内放送がかかった時は、ああ到着が遅れるな、まあ、余裕のあるスケジュールだし、長野行きの電車は何本もあるから多少遅れても大丈夫と思っていた。

『大雨の影響で』9時半前に塚山という駅で止まってしまった。塚山ってどこ?直江津まであとどのくらい?

やがて車内放送から『代替バス』という言葉が聞こえてきたので、持っていたじゃがビーを食べる事に。朝のおにぎり1個だけではお腹がすいてバス酔いするかなと思って。

ホームに降りるのは自由だったが、荷物が心配なので私はずっと車内にいた。読書したり旅のメモをまとめたり。車外に出た人達は、身体を伸ばしたり電話したり駅員さんから情報を聞き出そうとしたりしていたようだ。

11時頃、『代替バスが到着しましたが、運転手との打ち合わせ等がありますので、そのままお待ちください。』という放送が流れた。今回は小布施行きは中止だな。バタバタ行ってもつまらないし。

やっとバスの準備ができたという事で、ぞろぞろと駅の外に向かった。歩きながら、こういうのを運命共同体っていうのかしら、なんて考えたりした。別に誰かと会話したり、目があって微笑みあったりしたわけではないのだが。

 バスは全部で4台来た。直江津直行が3台と柏崎とどこだか(忘れた)経由で直江津に行くのが1台。もちろん直江津直行に乗りたい。でもあれよあれよと3台のバスは一杯になってしまった。塚山周辺は晴れていたのでギラギラした日差しの中をあっちのバスこっちのバスと歩き回った私の哀しさよ。いや、もちろん私だけではなく多くの方々が同じ思いだったろう。

やっとの思いで経由バスに乗り込んで、出発したのは11時40分頃だった。さっそく当然のように酔う。飴でももっていればよかったなと後悔しながら、がんばって眠る事に専念。がんばれがんばれ。

 ふと目をさまして外を見ると直江津港の表示が見えた。じゃあすぐ駅に着くよね、という期待を裏切る程度の時間を過ぎて、やっと直江津駅前に到着した。あまり確かな記憶ではないが13時を過ぎていただろうか。キモチワルイけどがんばったね私。

再び、運命共同体のみなさんとぞろぞろ駅に向かう。改札の窓口に並んだ時点で共同体は解散したように感じた。皆さんそれぞれの目的地に向けての意識に切り替わったからであろう。

 13時57分発の長野行きに乗り込んで、売店で買ったツナマヨおにぎりを食べた。他の遅れている電車を待つために発車は数分遅れたけれど、ここから先は楽しい鉄道の旅だ!

 

 今回の教訓

・乗り物酔いの薬やスースーする飴は常に持っていたほうがよい。

・非常食は大事。

                     つづく

 

 

旅の思い出 2013夏 2

 2日目。

 朝から雨。前日の暑さが嘘のように涼しい。日中は電車で友人ユミちゃん宅に行き、夕方新潟駅にもどった。

 

 前夜は日本酒2合半と、私にしては呑みすぎたので今夜は飲み屋へは行かず、ビール少々飲んでごはんを食べようと街へ出た。

トンカツ食べたい。古町まで行けば有名店があるらしいが、バスに乗ってまで行くのはねえ。雨の中をトンカツもしくは何かおいしそうなごはんを食べられそうなお店を探して歩き回った。歩いているうちに万代バスセンターまで行ってしまったよ。でも心惹かれるお店には出会えず、結局再び駅近くの繁華街へ。

 もう、ホテルのそばにあったインド・ネパール料理屋でもいいかなあ、と思い始めた頃、一軒の古い洋食屋の看板が見えた。店の前には新潟名物のタレかつ丼もあると書いてある。よし、ここだ!と中に入った。

 店内も外観にふさわしい古めかしさで、あまりきれいとは言えない。(ひかえめな表現)

どうやら私が最初の客のようである。カウンターに腰かけて瓶ビールとカツ丼を注文。中瓶で出てきたビールはアサヒスーパードライだった。飲食店はスーパードライ率高いなあ。

ウンターの中には年配のコックさん。店内を見回すと、奥の壁には古いチャンバラ映画『快傑黒頭巾』のポスター。近くの壁には何枚もの写真。よく見ると林家木久翁師匠が写っているものばかり。師匠がかいた色紙やイラストもある。どうやらこの店のご主人とは『快傑黒頭巾』の俳優、大友柳太郎ファン同士のつながりがあるようだ。

 

 さあカツ丼。まずカツを一口パクリ。うわあ!すごく美味しい!!お肉がおいしい。タレの味もちょうどいい。

以前、会津若松ソースかつ丼を食べた事があるけれど(2回、別の店で)、ソースが私にはちょっと甘すぎだった。おいしかったけどね。でもこのタレの味は私好みだ。お店の味なのか、新潟のタレかつ丼全体の傾向なのかわからないが。

食べているうちにお客さんがぽつぽつやってきた。皆さん一人客の中年男性。私には量的にちょっと無理そうな、ボリュームたっぷりなものを注文なさっている。

私はビールも飲んでいたから、三分の二ほど食べたあたりでほぼ満腹。がんばって完食したのですっかりお腹が苦しい状態になってしまった。でも本当に美味しかった。

二晩続けて良いお店に入れてよかった。

 

 実は夫も、私と同時進行で一人旅をしていた。前日は山形。この日は秋田で私との共通の友人達と呑んでいた。

「腹つえー。」と以前その友人達に教わった秋田弁で夫にメールした。「おなかいっぱい」の意味である。                     

                          つづく

 

旅の思い出 2013夏 1

 8月某日、新潟・長野に行ってきた。新潟二泊、長野一泊の一人旅である。

新潟では父の実家にいる祖母(98歳)に顔を見せる事、学生時代の友人ユミちゃんに会いに行く事、お酒を呑む事、が目的であり、長野では長野県信濃美術館の東山魁夷館に行く事、小布施に行く事、お酒を呑む事が目的であった。

祖母と暮らしている叔父夫婦も70代半ばを過ぎ、最近特に叔母の体調がよろしくないため、宿泊は新潟駅に近いホテルにした。(叔母には「気にしないで泊まってよー」と言われたけど)  

 父の故郷には新潟駅前から高速バスで1時間ほどで着くのだが、私は車酔いするするので大抵は電車で行く。乗り継ぎの待ち時間を考えなければ乗っている時間は35分くらいか。着いた駅から15分弱バスに乗ることになるけれど、そのくらいなら大丈夫。ほとんど真っ直ぐな道だし。

しかし今回はスケジュール的に電車では難しかったので高速バスで行くことに。で、やっぱり酔った。新潟駅を出発してしばらくは街中なのでぐるぐる曲がったり、信号が多いのでブレーキを踏むことも多いし。そういうのに弱いんだ。がんばれ私。

がんばった私は無事に昼頃父実家に到着し、祖母、叔父夫婦、近所に住むM子叔母と仕出し弁当をいただいたのであった。

 高齢の祖母は、今さっき話した事はすぐ忘れてしまうが昔の出来事は昨日の事のように憶えていて、その頃の話を聞くのが興味深い。祖父が曾祖母から受けていた婿いびりの話とか(祖父は婿養子)戦争中の話とか重たい内容なのだが、祖母のユーモラスな口調で聞くと遠い昔話のようである。昔話だけどさ。身近な人たちの。

今年の春に出かけた先で撮った自分の写真をまじまじと眺めながら

「オレも歳とったなあ。いつからこんなおそろしげな姿に・・・」

と言う祖母。笑っちゃうじゃないか。

 帰りがけ、家の外まで見送りにきてくれた。

「また来るから生きててね。」

「生きてるからまた来い。」

年寄りとの別れはせつないなあ。

 

 帰りのバスではそれほど酔わず18時過ぎに新潟到着。予約したホテルをさがしてさまよう。系列のホテルのフロントで道を聞き、なんとかたどりついてチェックイン。

 

 さあ、呑みに行きましょう。とりあえず目指すは、数年前の冬にやはり一人で入った古い店。若くはないご夫婦が二人でやっている地味目のお店だった。のどぐろのアラ煮やのっぺをつまみに湊屋藤助や鶴の友を呑んだのだった。郷土料理だし、とうっかり注文してしまったのっぺには私の苦手な干しシイタケがごろごろたっぷり入っていた。自分で注文したのだからとがんばって完食したのもいい思い出である。(あたりまえだ)

 場所は漠然としか憶えていなかったけれど、このへんだったよなと歩き回る。ぐるぐると同じ場所を何度も何度も。ここだったと思うんだけど、という所は若向けのこじゃれた店が。なくなっちゃったのかしら。別の店にチャレンジしてみるか、と気持ちを切り替えまたぐるぐる。心ひかれるお店を2,3候補にあげて、それぞれのお店の前を行ったり来たり。はたから見たらなんて怪しい女であろうか。

結局、表に出ている品書きを見比べて、肴のお値段はやや高めだけれど、お酒の種類も豊富な割烹・小料理のお店へ。

 

 そろそろとお店に入ると出迎えてくれたのは着物にたすき掛けのママ。明るいお母さんといった雰囲気。

小上がりでは会社の同僚の飲み会、といった風情のグループが楽しげにのんでいた。私はカウンターへ。カウンターの中にいる板前のマスターの雰囲気は、地元でよく行く飲み屋のマスターに通じるものがあり、きっと美味しいものを出すんだろうな、となんとなく安心する。

 本当はまずビールをのみたいところだが、私の体はアルコールの許容量が多くないので一人で何種類ものお酒を呑むにはビールはあきらめた方がいいだろう、と最初から日本酒にいくことにする。

純米酒は何があるか聞くと、麒麟山と鶴齢だという。じゃあ鶴齢を、とたのんだら、なんと品切れであった。残念。麒麟山を注文。

ママは「旅行者はみんな、純米を呑みたがるのよねえ。本醸造だって美味しいのはたくさんあるのに。」と何やらくやしそう。じゃあ、次のお酒はママおすすめの本醸造をいただきましょうね。

 写真を1枚も撮らなかったのではっきり憶えていないけれど、お通しは冷たくさっぱりした味付けの茄子だった。美味しかった記憶はしっかりある。

枝豆と旬の焼き魚のスズキを注文したら、スズキは品切れ。そのかわりアラバチメはどう?と言われたのでそれをいただく事にした。アラバチメって初めて聞く魚だったので名前を忘れないようにノートにメモ。ママには「まめねえ。」と笑われたけれど、呑んだお酒の名前も食べたものもお店の名前も全部メモしておいた。じゃないと絶対忘れるから。このブログを書けるのもメモのおかげである。旅の恥はかき捨てさ。

小上がりのグループはドカベンの話をしていた。そういえば水島真司は新潟の人だったっけ。

 

 魚は塩焼きで出てくるのかと思ったら、しょうゆだれをぬって焼いたものだった。上にちらしてある青ネギがいいアクセントになっていて美味しい。お酒が進む。ごはんにも合いそう。

 麒麟山を呑み終える前に、ママが私に出してくれるお酒を選び始めた。「麒麟山、全部呑んじゃわないでね。」と言って。呑み比べてって事ですね。

出してくれたのは 竹林爽風 というお酒の特別本醸造。うん。美味しいです。でも呑み比べたらやっぱり私は純米酒の方が好きだなあ。

正直に言ってしまった。もちろん、美味しいと思ったのはウソではない。ただ純米に比べると軽くて、するすると呑みすぎてしまいそうなのだ。お酒を沢山呑む人にはいいかもしれないけれど、私は呑みすぎない量できっちり満足したいので、どっしりしっかりした純米を呑みたいのである。(まあ、たまに呑みすぎちゃうこともある。)

 途中で隣の席に常連男性がやってきた。がっしりした人で、顔と口調がちょっぴり所ジョージっぽいので仮に所さんとしておこう。明るく紳士的な所さんは注文した十全茄子(じゅうぜんなす)の漬物を

「一緒に食べましょう。」と言ってくださった。せっかくなので遠慮なくいただく私。うわあ、美味しい。果物のような瑞々しさである。

新潟県は茄子の種類がすごく多いんだよ、とマスターが教えてくれた。所さんはご自身でも十全茄子漬けを作ったことがあるそうだが、このお店のような味が出せない、と言っていた。

 お酒をもうちょっと呑みたいなあ、でも2合きっちり呑んじゃってるるから、もう1杯は多いなあ。「鶴の友を半分だけ欲しいな」とママに言ってみたら、快く出してくれた。ありがたいことである。

 

 ママやマスター、所さんとのおしゃべりの中で、私が探し回ったお店についてきいてみたところ、「あそこは店主が高齢でやめちゃったんだよ。」とマスターが教えてくれた。やはりそうか。こじゃれた店ばかり増えやがって。ママも「私の行く店がどんどんなくなっちゃうわよ。」と嘆いていた。

 楽しく過ごしているうちにお酒もつまみもなくなった。さあホテルに帰ろう。

所さんには「よくこの店に来たよねえ。」と感心したように言われた。とびこみで入ったお店が当たりだとうれしい。

 

  ホテルで、帰りにコンビニで買った納豆巻きを〆に食べて、その晩の飲食は終了。

                                つづく

久しぶりに音楽いろいろ

 9月は久しぶりに音楽モノのお出かけが3回。

 まず10日。佐野元春の1983年に公開されたというドキュメンタリー、『Film No Damage』を夫と見にいった。このフィルム、長いこと行方不明だったらしいが昨年奇跡的に見つかって、初上映から30周年の今年、劇場公開することになったそうだ。

 映像の中の元春は若かった。30年前なんだからあたりまえだけど。今の私達よりもずっと若い、20代の元春だ。見た目はもちろん、声も今とはちょっと違うけれど、芯の部分は変わっていない。

夫婦で元春を聴きながらどちらからともなくよく出る言葉。

「元春って結局ずーっと昔から『いつかきっと来る希望』についてうたっているよね。」

30年以上にわたってずっと変わらずにうたい続けている元春(バンドは変わってるけど)、中学生の頃から40代の今までずっと元春を聴き続けている夫(だけでなく他の長年のファンの方々も)、なんだか皆で一緒に成長していってるようでいいなあ、と、このドキュメンタリーフィルムを見て改めて感じたのでした。

 

 それから18日、山口洋(HEATWAVE)×仲井戸”CHABO”麗市「MY LIFE  IS MY MESSAGE 2013」のために南青山マンダラへ行った。これは一人で。このライブは福島県相馬市応援プロジェクト(http://mylifeismymessage.info/)の活動のひとつだという。入口では『そうまかえる新聞』を配っていた。

 HEATWAVEは92年に出た『陽はまた昇る』というアルバムを持っていてずいぶん聴いた。他のアルバムは聴いた事がない。山口洋の声は好きなので初めてのライブを楽しみにしていた。

 ライブ構成は1部が山口洋のソロ、2部がチャボのソロ、3部が二人で、というもの。

「仲井戸弟です。」と出てきた山口さん、1曲目がいきなり佐野元春の『君を連れてゆく』のカバー。おお!

この曲は元春がうたうよりもこの人がうたう方が好きだ。(元春のデビュー30周年大阪でのライブでうたうのをNHK BSで見た。ものすごくかっこよかった。)

他の初めて聴く曲も、九州の方言まじりで語られる素朴なMCもよかった。特に、『新・新・相馬盆唄』心に沁みた。

それにしてもシャイな人のようだ。

「山口兄です。」と出てきたチャボに言わせると「二人ともウジウジしちゃうタイプ」なのでユニット名は『ザ・ダークネス』だって。

あの有名な『満月の夕』を初めて生で聴けたのもうれしかった。

 それにしてもライブって、その日その場所でしか味わえない唯一無二のものだな。それぞれのミュージシャンの資質、体調、その日のお客を含めた会場の雰囲気、季節、天気、その他もろもろの条件によって、同じ曲を演奏するにしても毎日違うものになっている(はず)。成分が違うものを混ぜ合わせておきる化学変化のようだ。当たり前の事だけれど。

と、ジャカジャカと心底楽しそうにギターを掻き鳴らす二人を見ながら感じたのでした。

 

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 そして、また別の化学変化を楽しもうと出かけたのは27日のプラッサ・オンゼ。『江藤有希 ちょっとソロ、ほとんどデュオ Vol.7』に行ってきた。バイオリン弾きの江藤さんは色々な所で活動をされているようですが、私達はコーコーヤの江藤さんしか(ほとんど)聴いたことがない。このシリーズは前から興味があったのだが今回初めてプラッサでやる、という事で出かけたのである。しかもお相手はパーカッションの岡部洋一さん。わくわく。

カバー中心のライブ。『フォホー・ブラジル』よかったな。この手の曲に岡部さんが入ると、ほんとかっこいい。

 なんていう曲か忘れたけれど、聴きながら、音楽って世界をめぐるなあ、とぼんやり考えていた。南米のどこかの曲だと思うけれど、ヨーロッパ(北部あたり?)のロマ音楽のような風味を感じ、そういえばロマのルーツはインドで中東を通ってヨーロッパに入っていったと読んだことあるなあ、ヨーロッパから南米への移民達はヨーロッパの音楽を持ち込み、先住民やアフリカからの奴隷が持ち込んだ音楽と融合していったんだよなあ。などと、つらつら。

 江藤さんの曲『雲のかたち』を聴けたのはうれしい。彼女の作るメロディーは優しくて親しみやすい。すうっと耳に入ってくる。でも鼻歌程度に口ずさんでみると以外に難しくて複雑なメロディーだと気付くのだ。ブラジル音楽を通過している人の特徴なんだろうな。

珍しい楽器を演奏する岡部さんを目の前で堪能できたし、この〈二人だけ〉のライブ、楽しかった!