今更シリーズ 悦!ガイジン旅 2
2日目。
6時45分に目覚ましをかけておいたが、25分に目がさめた。のろのろと支度開始。
前夜、遅くにがっつり飲み食いしたせいか、内臓が疲れている感じ。胃がもたれている。やがて夫も起床。
本日は別行動。夫は金比羅宮、私は東山魁夷せとうち美術館へ行くのだ。
7時15分に「行ってきまーす」と、ひとあし先にホテルを出た。
朝食をどうしようか迷いながら駅に着いた。駅のホームにうどん屋があったからそこで食べようか、でもあまり食欲ないから食べたくなった時にいつでも食べられるように、おにぎりでも買っておくか、と考えた末にコンビニで鮭のおにぎりを買った。結局、駅のベンチに座ってすぐ食べてしまった。
ホームに、乗る予定の7時39分の電車が止まっている事に気付いて、改札をSuicaで通り、乗り込んだ。時間通り発車。
車窓から見えた駅。面白い駅名だな。
8時9分に坂出(さかいで)駅着。
晴れてるけれど風が冷たい中、バスを待っていると、白っぽい日本犬(柴よりちょっと大きめ)を連れたおじさんが通りかかった。いきなり犬がダーッと走り出したのでおじさんも引っ張られて走る。どこまで走るんだ、と見ていたら数十メートル行った所でいきなり犬は立ち止まり、フンフン匂いを嗅ぎ始めた。ああ、日本犬だなあ。
バスが来たが、このバスにのっていいのか不安なので、美術館行きますよね、と運転手さんに確認してから乗り込み、8時20分出発。
時刻表通り、8時38分に美術館前に着いた。乗客は最後まで私一人。バスの本数が少ないのも当然か。
開館は9時なので、すぐ隣の瀬戸大橋記念公園をぶらついて時間をつぶす事にした。人もまばらで肌寒い。
ケルト遺跡っぽい、ギャラリー。
今でもわからないのだが、公園や美術館の周りの芝生を歩くと、かすかな音がする。自分の足音ではなく、一歩踏み出すごとに、そこから2,3歩先あたりをどんぐりが何個かころがるような、かすかなパチパチッという音がしたのだ。あれは何だろう。そばには誰もいない。埋立地のせいか?(埋立地かどうか知らないけど)
なんだろうなあ、と考えながら地面を踏みしめているうちに、いつのまにか9時を過ぎていたので美術館へ向かった。
入館料300円。
一階展示室のテーマは『季節を駆ける/白馬との旅』
2階展示室のテーマは『魁夷 ヨーロッパを描く』
絵の9割は見た事のあるものだったが、初めての場所で見たからか新鮮に感じる。
やっぱり魁夷の絵、好きだなあ。
見ているうちに眠くなって、ベンチに座って、しばらく目を閉じたりしたけど。
家の近所の魁夷記念館に、この美術館のポスターもはってあって、行ってみたいとは思っていたが、まさか本当に来ちゃうなんて、数週間前まで考えてもいなかった。旅行が香川に決まって、香川って、うどんとガイジンの他に何があるんだっけ?と、大変シツレイな事を考えた時に思い出したのが、この美術館だったのだ。思い出してよかった。
じっくり絵を鑑賞してから館内のカフェで休憩。飲み物中心のメニューの中に『塩アイス』なるものがあったのでそれにした。このあたりは塩の名産地だという。
大きな窓の向こうには海と瀬戸大橋、島がいくつか見える。魁夷のおじいさんがその中の一つ、櫃石島(ひついしじま)の出身だったのだそうだ。
塩アイスは美味しかった。不二家のミルキーを思い出す味。
カフェ内に置いてある本や画集の中から『東山魁夷をたずねて』というものを開いてみた。自宅内部や、庭の写真が載っている。おお、あの塀の中はこうなっているのか。家が近所の私は興味深くページをめくった。
ビデオコーナーへ。数本のドキュメンタリービデオが繰り返し流れている。うとうとしながらも全部みた。
お土産コーナーでは、私の好きな柄のマグカップを売っていたが、荷物が重くなるのがいやなのであきらめ、同じ柄の一筆箋を購入。
だらだらのんびり過ごしたが、まだバスの時間まで30分くらいはある。残りの時間は公園で過ごそうと美術館を出た。その時、初めて気が付いたのだが、美術館の入り口に続く白い道は、魁夷の有名な『道』を模していたのだね。
昼過ぎの公園は、朝と違って家族連れがたくさんいて賑やかだった。朝にはまだ出ていなかった噴水が水を上げている。
この噴水は瀬戸大橋を表していて
奥に敷き詰められている複数の石が、瀬戸内の島々だそうな。なるほど。
12時25分、時刻表通りにバスが来た。やっぱり不安なので、駅いきますよね、と確認してから乗り込む。朝と同じ運転手さんだった。帰りはバス酔いしてつらかったけれど、なんとか駅に到着。そしてやっぱり、駅まで乗客は私一人だった。
12時55分の電車に乗り13時23分髙松着。
さすがにお腹がすいたので、駅前の めりけんや へ。初めてのセルフうどん。お盆を持って列に並ぶ。若い兄ちゃん達は肉うどんの大、とか頼んでいる。私は、かま玉山芋(並)を注文。サイドメニューはおいなりさんを2つ。
まだ万全ではない体に、優しく浸み込むうどん。ああ美味しい。
うどん県の人は、うどんをほとんど噛まずに飲み込むという。近くの席で食べている、一人の女性客をこっそり観察してみた。お箸で一本ずつ摘んで、3,4回噛んで飲み込んでいるようだ。私も数回まねしてみた。ほう、思っていたより悪くない。
駅の土産物屋で、翌日何を買って帰るか下見した後、近くのスーパーになんとなく入って見て回る。葉ごぼうを売っていた。やっぱりフキのような見た目の野菜だった。
とりモツが普通に肉売り場にあって、うらやましい。しかも若鳥肝とか親鳥玉ひもとか。
サンポート高松の方に行くと、広場の奥にはスケボーの練習場があって、少年達が滑ったり跳んだりしていた。海にはヨットがたくさん。
タワービルにはいると、ホールで何かのイベントがあるらしく、開場待ちの人達がずらりと並んでいた。香川プラザという場所があったので入ってみたが、あまり面白くない。なんにもないじゃん、と思いながらも一通り見て出た。でもここ、なんにもないなんて事はなかった、と翌日知る事になる。
ビル内の本屋で、讃岐うどんの歴史など、興味深い記述が満載の本があって欲しかったが、やはり荷物が重くなるのがいやで買わなかった。タイトルも著者も忘れてしまったのが残念だ。
土産物屋の品ぞろえが、駅とは違っていて、こちらの店の方が好きだと感じた。
鯵のソーセージ(愛媛のだけど)と、いりこだしつゆ、明日来られたら買うつもり。
そろそろホテルにもどるか。でも甘いおやつと濃いめに入れたお茶がほしい、という訳でスーパーでパックのほうじ茶と水2ℓ、駅のコンビニ(土産物屋兼)で銘菓かまどの5個入りを購入。ホテルに帰ってお湯をわかし、水筒を急須代わりにお茶を入れておやつ。前日から甘いものが欲しかったので、よけいに美味しい。
夫にメールしたら高松港旅客ターミナルビルにいるらしい。そのうちホテルにもどってくるだろうと思って、お茶を飲みながら本を読んだりごろごろしていたが、帰る様子がないのでもう一度メール。駅で待ち合わせて、呑みに行く事になった。というか夫はもともとそのつもりだったらしい。それと、高松港旅客ターミナルビルって、どこだがわかっていなかったのだが、私のいたビルの隣だった。
2日目は、ガイジンが呑めそうなお店を予約済み。18時に予約しておいたので、時間通りに行ったら準備中の札が下がっている。5分程ぶらついて戻って来たけどまだ準備中のまま。お客さんの気配がするのでドアを開けてみたら、しっかり営業してやがった。
通されたのは隣とカーテン(のようなもの)で仕切られた、掘りごたつタイプの小上がり。
まずはエビスの中瓶で乾杯。お通しはほうれんそうのお浸し。
しょうゆ豆、鰹と鰆の塩たたき(夫用)、地えびと三つ葉のかき揚げ、さつまいも天ぷらを注文。天ぷらはいくつもある具材の中から好きなのを選べるのだが、一切れで出てくるのか、複数切れでてくるのか、わからないので店員さんにきいてみた。店員さんは、複数切れですよと答えた。でもなんだか歯切れが悪い感じで、私の質問がわかっていなさそうでもあった。(私の質問の仕方がよくなかったかもしれない。)
出てきた皿にはかき揚げが2つ、そして名刺くらいの大きさで、5ミリ程の薄さのいも天が、ぺらん、とひとつだけ。あれー?と思ったが、まあいい。意思の疎通がうまくいかなかったんだ。天つゆじゃなくて塩だったのがうれしい。かき揚げも美味しかったし。
さあ、お酒を注文しましょうか、と豊富な地酒メニューからガイジンの山廃無濾過生原酒(亀の尾)を選んだ。ガイジンだけでも4種類あった。
「お燗にしてもらえますか?」と尋ねた私に、戸惑った様子の店員の若い兄ちゃんは
「このお酒は冷たいほうが美味しいと思いますが・・・」
えー!なに言ってんの!?!と心の中で叫んだ。
店の方針で燗はしない、というならしかたないけど(残念だけど)、そういうわけではなさそうだし、「このお酒は冷たい方が」なんて聞き捨てならない事を言う君はガイジン山廃の燗をのんだ事があるのか!と少し感情が高ぶって、
「いいえ、このお酒は燗が美味しいので燗してください。熱めでお願いします。」
と腹に力をこめ、強めの口調で言ってしまった。びびらせちゃってたらごめん。バイトの君が悪いのではない。店の教育が悪いのだ。兄ちゃんが引っ込んでから夫婦でひとしきり話し込む。
夫の注文した塩たたき、何かの柑橘果汁がかかっていて(すだち?)それが魚の旨味を消しちゃっていておいしくないという。塩だけの味がよかったのに。魚が埋まるほどの玉ねぎスライスから出た水分もおいしくない原因のひとつだったらしい。残念だったね。魚は全部食べていたけど、さすがに玉ねぎは結構残していた。
香川県の郷土料理、しょうゆ豆は独特の硬めの食感で美味しい。
ガイジンのお燗が登場。やっぱり美味しい。特に山廃純米のお燗の美味しさ!!
少々の不満も、どうでもよくなる。
あなご柳川、じゃこおろしを追加で注文。
柳川はとても美味しい。
しょうゆがかかった状態で出されたじゃこおろしは、私にはしょっぱい。自分でかけさせてほしい。(テーブルにはしょうゆが置いてない。)というより、じゃこの塩気だけでいいんだ、私は。しょうゆは香りづけ程度で。
ガイジンの1合徳利はあっというまに空になった。同じお酒を今度は2合徳利でおかわり。その後は山廃純米無濾過生(赤磐雄町)の燗を注文(2合)。これは夫がガイジンの中で一番好きなお酒だ。私は米の違いがわかるような舌を持っていないが、やはり大好き。
〆の炭水化物に鯛そうめんを注文してみた。二人とも初めて。
あら、ものすごく美味しい。焼いた鯛の香ばしさも、おつゆの味もとても良い。
『準備中』の札問題とか、いも天が薄っぺらかったとか、バイト君の「このお酒は冷たい方が」発言とか、塩たたきの不幸とか、隣の席の家族連れが無神経だったとか、色々あったマイナスを包み込むガイジンの懐の深さだった。(包み込む、といっても忘れるわけではないぞ。)
二日続けてガイジンを呑めて、本当によかった。次はいつ呑めるだろうか。
ホテルにもどってお風呂に入って、夫はビールと柿の種、チーズ鱈で一人二次会。私は本を読もうと思ったけれど、すぐに寝てしまった。